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半蔵の心得

第5回 あなたが一番大切にしているものは何ですか?

 今回は、候補者と依頼主(法人)のマッチングをはかる際に、何が一番大切かをお話します。

 私は個人にも依頼主にも、コンピュータのOS(オペレーションシステム)とAP(アプリケーションソフト)のようなものがあると思います。OSにあたるのは、依頼主なら経営理念やビジョン、社風、経営者や幹部の人物像、業界の文化や慣習などに該当します。心技体でいえば、「心」と「体」。候補者なら理念や信条、信念やポリシー、夢、キャリアプランやライフプラン、人格などになります。

 APは「技」(技術や業績、キャリア)になります。

 一般的な転職は、OSよりもAPのマッチングを重視しがちです。しかし、たとえAPが合致していても、OSが合わないと転職した後にうまくいかないケースが多いのです。

OSが合えばAPはいくらでも補える

 「あなたが一番大切にしているものは何ですか?」

 テレビ東京で放送されていた経済ドラマ「ヘッドハンター」の主人公のヘッドハンター黒澤(江口洋介さん)は、たびたび候補者にこの言葉を投げかけています。これはまさにOSを探り出すための質問だと思います。

 第5話で黒澤がターゲットにしたのは、大手鉄鋼会社に勤める西郷(板尾創路さん)でした。西郷は総務部で社内報を作る地味な仕事に就いています。

 西郷は入社以来、営業部、事業所の所長、資材部、経理部とさまざまな部署に配属されています。しかし、これといった輝かしい実績もなく、資格も持っていない。本人もヘッドハントの声がかかって驚くぐらい、目立たない人でした。

 黒澤は西郷に総務部の部長としてのオファーをしました。年収200万円アップという好条件にも関わらず、西郷は「私は自分の会社を愛している」とあっさり申し出を蹴ってしまいます。信念を持つ、ぶれない人です。

 そんななか、西郷が勤めている会社のトップが粉飾決算をしていたことが明るみに出て、会社は一気に経営が傾きます。黒澤も、「今動かないと終わりだ」と沈みゆく船から救い出そうとしましたが、西郷は残って働き続けることを決意します。

 そして西郷は、粉飾決算を解明して会社を解体する清算事業を担当することになりました。不正を追求しなければならないので社内からは恨まれますし、何かを生み出すわけではないので、誰もやりたがらない仕事です。

 同時に、西郷は部下を全員転職させるために裏で手を回していました。沈みゆく船の船長のように、部下を逃し、最後まで見届けたのです。責任を取らないリーダーが多い昨今、素晴らしい行動です。

 最終的に、西郷は黒澤の勧めで病院の事務長に転職を果たします。黒澤から話を聞いたときは、「畑違いではないか」とためらいます。これこそ依頼主と候補者のAPがマッチしていない例でしょう。

 しかし、病院が西郷に来てほしいと望んだのは、最後まで会社に残って不正の後始末をしようとした、西郷の良心と強い信念に感動したからでした。つまり、APは一致しなくても、OSがピタリと合ったケースなのです。

相手の内側を見る視点を養おう

 私の知り合いである教育者・藤倉憲一先生も、このドラマのファンのお一人です。藤倉先生からは、私のOS、AP説に対して、「何が出来るのかというAPも見逃すことは出来ませんが、大切なことは、その人のOSがどのように形成されてきたのかを読もうとする努力です。教育においてもこの視点は欠かせませんが、多くの先生は〇〇ちゃんは△△が出来る、というAPにしか目が向いていないのが現状です」とご意見をいただきました。

 藤倉先生によると、黒澤は候補者の外側だけではなく、内側も見ているとのこと。内側を見るために投げかけるのが、「あなたが一番大切に~」というセリフなのです。

 転職に限らず、日常生活でも相手の内側、つまりOSを知ろうとするのは、相手を深く理解するための第一歩なのだと思います。皆さんも、時に「あなたが一番大切にしているものは何ですか」と周りの人に投げかけてみたらいかがでしょうか。立場や年齢を超えた、深い話ができるようになるでしょう。

 

2018年6月4日

武元康明

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