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半蔵の心得

第8回 ドラえもんから学ぶ タイプ別自分育成

 日本人の自尊心は低いとよく言われています。米ブラッドリー大学心理学科研究チームが2005年に調査した世界53カ国自尊心ランキングによると、日本人は53位と最下位でした。今から10年以上前の調査とはいえ、日本人の気質はそれほど大きく変化していないでしょう。

 この「自尊心」は、これからの労働市場において、重要なキーワードになると私は考えています。

日本人はのび太気質?

 内閣府の「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、日本の若者(1329歳)は諸外国と比べて、自分を肯定的にとらえている人の割合が低いという結果が出ました。

 「自分自身に満足している」という割合が、日本は45.8%。他の国は7080%台だというのに半数にも満たないのです。

 「自分には長所がある」の割合は68.9%。これは高いように感じますが、他の国は7090%台です。

 さらに、「自分について誇りを持っているもの」に対して、「まじめ」「やさしさ」という項目の数値は比較的高かったものの、諸外国に比べると数値は低い傾向がありました。

 自分に満足していなくて、短所が多くて、気が弱く自信を持てない。

 これは何かのキャラクターを連想しませんか?

 そうです、ドラえもんののび太君です。自分をダメ人間だと思い、ジャイアンにいじめられても何も言えず、つねにドラえもんに頼りっぱなしの、まさにのび太君そのものではないでしょうか。

 就活コーチングを行っている廣瀬泰幸氏の『新卒採用基準』(東洋経済新報社)では、ドラえもんのキャラクターを「自尊型」(しずかちゃん)、「萎縮型」(のび太)、「全能型」(ジャイアン)、「仮想型」(スネ夫)の4タイプに分けています(図参照)。

この判断軸になるのは、自己肯定感が高いか低いか、他者軽視感が高いか低いか。

 全能型は自己肯定感が高いのと同時に、他者を見下す傾向も強いお山の大将タイプ。まさにジャイアンです。 

 自尊型は自己肯定感が高く、他者を軽視しないタイプ。ジャイアンに臆することなく、弱いのび太君も軽蔑しない心優しいしずかちゃんはこのタイプになります。

 萎縮型は自己肯定感が低い一方で、他者を尊重するタイプ。自分に自信がなくても人を見下すことはない気弱なのび太君がこれになります。

 仮想型は自己肯定感が低く、他者を軽視する傾向が強いタイプ。虎(ジャイアン)の威を借る狐である嫌味なスネ夫が当てはまります。

 実は、日本人はのび太とスネ夫の割合が他の国よりも高いのです(図参照)。2つを合わせて約7割になります。大学生にとったアンケートとはいえ、大人も変わらないでしょう。北米人にジャイアンタイプが多いのは、ドナルド・トランプ大統領を見ていたらよく分かります(笑)。

なぜあなたは自信を持てないのか

 なぜ、日本人にのび太とスネ夫タイプが多いのでしょうか。

 のび太とスネ夫の共通点は、自己肯定感がなく自信がないこと。今、多くの人が同じように「自分不信」に陥っています。その原因を3つの方向から考えてみました。

 

①国民性 

 心理学者の河合隼雄氏の『中空構造 日本の深層』(中央公論新社)という本で、日本人は中心が中空、つまり空っぽであると述べています。「古事記」の時代からずっと空っぽで、だから西洋文化をすんなりと受け入れられたのだそうです。

 中心が空っぽであることがマイナスの方向に作用すると、無気力や無責任、自己主張がなくて人任せになってしまうのだとか。のび太やスネ夫になりやすくなるということです。

 河合隼雄氏は、日本人は「場」を大切にし、西洋人は「個人」を大切にするとも説いています。日本人は「場」があると自分の意見を抑えて、周りの人たちが望むようなことを言おうとします。一方、西洋人は何人集まっても個人は個人。自分の意見を言うことを大事にする傾向があります。

 それはつまり、判断軸が自分にあるのではなく、他人にあるということになります。自分という「個」が確立していなければ、肯定するのは難しいでしょう。

 

②教育

 戦後の日本の教育は相対的な減点法です。長所を伸ばすより、欠点をなくすことに重きをおいて、まんべんなくできるのがよいとされています。総合的な人間性の向上を目指すのではなく、受験やテストといった目に見える成果を重視しています。

 さらに、今はより実学的な教育になっているので、お金にならないもの、有用性がないものには価値がないという風潮になりつつあります。大学で基礎研究の研究費が減っているのも、その表れでしょう。

 成果ばかりを重視していると、価値のあるものを提供できない自分は役に立たないと、自己肯定感が低くなるのではないでしょうか。

 そもそも、欠点のない人はほんの一握りですし、多くの人はまんべんなくできるわけではありません。学力は能力によるふるい分けをし、強調ではなく同調を強いる教育を改めない限り、自己肯定感は上がらないでしょう。

 

③社会、文化

 コラムの第6回でご紹介した沖縄の実業家の樋口耕太郎さんは、大学で教えているときに同調圧力により徹底して目立たないようにしている沖縄の若者を見て、自尊心を取り戻すために「命の学校」を開こうと考えました。

 沖縄だけではなく、全国的に「悪目立ち」するのを避ける若者が増えています。それはネットやSNSの影響も大きいでしょう。

 ネットで情報量が増えると、「オレってすごくない?」と思っていても、ちょっと調べるともっとすごい人がゴロゴロいるのが分かるので、夢や目標を持ちづらくなりました。昔のように「根拠のない自信」を持っている若者を、それほど見かけなくなったと思います。

 さらに、根拠のない自信を持っている若者はそれこそネットで叩かれます。今はネットで炎上するとその情報はほぼ永遠に残り、就活の時に企業も調べるそうです。

 そのような風潮なので、目立たないようにするのが一番という思考になっても無理はありません。日本ではチャレンジする人を応援するより、足を引っ張る人の方が多い文化のように感じます。

自分にとってのドラえもんを見つけよう

 それでは、企業はどのような人材を望んでいるのでしょうか。

 日本の企業の場合、ほぼしずかちゃんタイプです。私がヘッドハンターとして出会う候補者の方でも、転職がうまくいくのはしずかちゃんタイプが多いと感じています。

 グローバル時代に通用する人材になるには、ジャイアンのほうが適しているように感じるかもしれません。しかし、相手をガンガン攻撃して突き進むタイプは、最近は欧米でも受け入れられないようです(トランプ大統領は例外ですが)。自尊心が高く、人を尊重する人材が真のグローバル人材になれるのです。

 まずは自分のタイプを確認することから始めましょう。自分がしずかちゃんタイプ以外であるのなら、ぜひしずかちゃんを目指してください。

 ジャイアンタイプなら、人を尊重すること。のび太タイプなら自分を肯定すること。スネ夫はこの2つをしなくてはならないので大変ですが、時間はかかっても自分を向上させることが大事なのだと思います。

 これらの改善のために手助けしてくれるのが、ドラえもんです。

 のび太はドラえもんと出会うことにより、人間的にも成長しました。皆さんも、自分にとってのドラえもんを探してみてはいかがでしょうか。

 ドラえもんはのび太が間違ったことをしていると叱り、のび太が勇気を出せずにいると背中を押します。そういったメンターのような友人や先輩、先生を見つければ、人間的に成長できるでしょう。

 読書もいい方法です。人生で迷いが生じた時に何度も読み返すような本に出会えたら、その本も自分にとってのメンターになります。私の場合、法隆寺・宮大工棟梁の西岡常一さんが書かれた『木のいのち木のこころ<天>』はそのような一冊です。「木」を「人」に置き換えてこの本を読むと、人をどのように評価したらよいのかをはじめ、効率重視が生む問題点、現場の大切さなどを再認識でき、迷いが生じるときに必ず読み返すようにしています。

 本はドラえもんのポケットのようなもので、多くの知識や感動を与えてくれます。ネットでも情報は拾えますが、本は人そのものなので、本を通して人と出会うことができるのです。

 ジャイアンタイプやスネ夫タイプが人を尊重するようになるのは難しいかもしれませんが、方法はあります。最近は、欧米の企業の幹部はコーチングをしてくれる個人コーチをつけるのが主流になっています。コーチングを学んだ幹部が社員の意見によく耳を傾けるようになったという例もあるので、コーチングを学んでみるのは一方法です。

 忘れてはいけないのは、18歳を過ぎたら自分を育成するのは、あくまでも自分であるということ。そして、自分育成はいくつになっても必要であり、墓場に行くまで続くのです。

 

2018年6月26日

武元康明

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