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半蔵の心得

第10回 最強のサバイバルツール What構築能力、How能力

 働き方改革法案が成立し、副業が解禁されるなど、今「働き方」が大きく変わる転換期を迎えています。そのような激動の時代にビジネスで生き残っていくためには、何が必要なのでしょうか。

 これを考えることは、組織にとっても「どのような人材を採用するか」「人材をどう育てていくか」の判断材料になります。

ベストマッチングの秘訣

 私は数多くの優秀なビジネスパーソンとお会いし、共通するのは「What構築能力」と「How能力」だと感じています。

 What構築能力は一言で言うなら、問いをつくる力。「何?」「どんな?」を常に問いかけ、アイデアを出したり、解決方法を見つける創造的な力です。この能力がある人は、何もないゼロのところから新しいものを生み出す「ゼロイチ」の人になります。

 対するHow能力は、既に構築されたやるべきことをスムーズに進められる力です。革新的なアイデアは生まれないかもしれませんが、「どのように?」を常に考え、改善点を見つけて効率をよくする能力のある人です。

 この2つをバランスよく持っているのが理想的ですが、そのような人はとても少数です。しかし、私はどちらか一つが優れていれば、組織とのマッチング次第でうまくいくと考えています。

 企業には創業拡大期、安定期、衰退・変革期の3つのステージがあり、どんな企業でもこの3つのサイクルを繰り返します。What構築能力が必要とされるのは、創業拡大期と衰退・変革期。How能力は安定期です。

 企業のそれぞれのステージに合った能力があるので、そこがマッチしていると転職してもうまくいくと思います。今の職場で実力を発揮できていないのなら、その人の能力と企業のステージが合っていないのかもしれません。

家電メーカーから病院へ ―Gさんの場合―

 大手家電メーカーに勤めるGさんはがっしりした40代後半の男性で、「ザ・体育会系」という感じでした。性格はとても快活で豪快であり、部下の面倒見もいいのでまわりから慕われていました。

 Gさんは地方支社に配属され、工場長を務めて、時間やコスト、材料調達などの管理をして生産性を上げることに貢献していました。その実績が認められて地方支社のトップになったのです。

 ところが、長引く不況で国内の家電メーカーはどこも苦戦し、Gさんの会社も例外ではありませんでした。Gさんのいた支社で行っていた事業をM&Aで売却することになり、海外企業の経営者達が会社に乗り込んでくることになったのです。

 その時、Gさんはそのまま代表を続けてほしいと言われました。しかし、そうなると部下のクビを切らなくてはなりません。それだけはできないと、会社を辞めることを決意します。

 そんなGさんに、私は異業種の転職話を持ち掛けました。勧めたのは、地方大病院の事務長の職です。

 Gさんはその話を聞いたとき、「えっ、病院? 僕は医療に関する知識なんて全然ないですよ」とただただ驚いていらっしゃいました。

 大規模な病院になると、薬や医療機器・機材の管理などのほか、大人数のスタッフの管理もしなくてはならないので、工場と同じような管理が求められます。大規模な工場で管理業務をこなし、生産性を上げたGさんなら、業種が変わっても手腕を発揮できるだろうと考えたのです。

 Gさんは最初こそ驚いたものの、最終的には先祖代々住んでいた土地をも捨て、まさしく新天地での生活を選びました。

 転職したGさんはさっそく県内の病院をM&Aで買収し、訪問診療に特化した病院、透析に特化した病院などに変えていきました。さらに、会員に医師の診断や検査を受けられるスポーツジムも立ち上げたのです。

 また、グループ病院で患者さんの情報を共有できるシステムを構築し、スタッフのための勉強会を開いて人材育成をするなど、地道な改革も行いました。

 少子高齢化が進んで多くの市場が先細っている日本で、医療業界は高齢化が進んでいるからこそビジネスチャンスがある分野です。

 たとえば、リハビリの専門病院が増えていますが、利用するのは圧倒的に高齢者です。国の政策として高齢者をいつまでも病院に留めておかないようにしているので、高齢者が骨折して入院した場合は、治療終了後すぐにリハビリ病院に転院する流れになっています。退院後もリハビリ病院に通うためには専用の送迎車や介護タクシーが必要ですし、食事のケアも大事です。

 そのように、続々と高齢者向けのサービスが生まれており、なかには一人暮らしの高齢者が退院後に料理を作れるように料理のサポートをする病院もあります。

 こういう業界で活かされるのはWhat構築能力なのです。

GさんはすぐれたWhat構築能力で次々と新しいアイデアを考え、How能力で改革を推し進めました。

 実は、Gさんの年収は家電メーカーの時に比べると500万円以上も減り、条件的にはいいとは言えません。それでも、日々新しいことにチャレンジしているGさんはとても充実した生活を送っていらして、久しぶりにお会いするといつも楽しそうに仕事の話をしてくださいます。顔色もよく、心なしか若返ったように見えるぐらいです。

これからの時代はWhat構築能力を磨く

 それでは、GさんのようなWhat構築能力とHow能力はどのように身につければいいのでしょうか。

 What構築能力やHow能力を身につけている人には、以下のような傾向があります。

 

  • What構築能力

・遊びにも一生懸命。趣味やボランティアなど会社以外の世界を持っている

・アンテナの感度がよく、新しい情報を常に仕入れている

・仕事以外の知識も豊富

・好奇心が旺盛で、いくつになってもチャレンジ精神が旺盛

・今までの生活や習慣を捨てられる

・当たり前のことを「なぜ?」と考える

・情報や人の話を鵜呑みにしない

・変化を恐れず、「自分ならどうするか」を常に考えている

・ムダを愛する。ムダや遊びからヒントを見つける

 

  • How能力

・習慣をつくり、長く継続できる

・今あるものから改善点を見つけるのが得意

・つねに効率、効果を合理的に考える

・誰とでも分け隔てなくつきあえる

・場の雰囲気を大事にする

・分析や検証が得意

・工夫することに喜びを感じる

 

 このうち、How能力は誰でも鍛えられますし、日本人はこの能力が高いと感じます。ただし、How能力は今後AIがとってかわる可能性があります。誰にでもできることは、ロボットでもできるということです。

 これからの時代に求められるのは、What構築能力。日本人はイノベーションを生み出す力が弱いと言われています。しかし、子供のころは誰もが「なんで?」「どうして?」と何にでも疑問を持つ「なぜなに質問箱」でした。受験で選択式の問題に答えるためには、必要になるのは暗記力で、「なぜなに質問箱」は邪魔になります。そうやって、知らず知らずWhat構築能力の芽は摘まれていきます。

 今から鍛えるのであれば、遊びを大事にするのが第一です。無趣味の一流経営者の方は少数派で、スポーツや読書、芸術の分野に造詣が深い方が大半です。その遊び心が経営にも活かされているのだと思います。一見ムダなことこそ、What構築能力を鍛えられるのです。

 資格や語学のための勉強をしても、How能力しか鍛えられません。What構築能力を鍛えるにはまず脳を活性化しなくてはならないでしょう。

 そのためには、まず心と身体のコンディションを整えなくてはなりません。どんな仕事でも一流ならばシビアな健康管理が必要です。アルコールを減らして運動を増やせばかなり脳が活性化すると思います。やはり「心技体」は一体なのです。

 そして、脳を活性化するためにまずは常識だと言われていることを「なぜ?」「どうして?」と疑ってみる習慣をつくるのをおススメします。

 たとえば電車の中で、スマフォのゲームやネットで時間をつぶすのではなく、「なぜみんなスマフォをいじるのか?」「何%の人がやっているのか?」「なぜよくスマフォを落とすのか?」などを考えてみてはいかがでしょうか。それが何かのヒントにつながるかもしれません。

 

2018年7月30日

武元康明

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