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豊岡にて

兵庫県

兵庫県は瀬戸内海にも日本海にも面し、山も持つ。面積は全国12位だが、自然が充実して、文化も華やかなため、とても「広い」県だと感じる。

そんな兵庫県をひとくくりに語ることはできまい。

というわけで、兵庫の中でも私にとって思い出深い土地、日本海に面した豊岡市について、少しばかりお話ししたいと思う。

豊岡が思い出深いのは、同じ候補者の元に足繁く通ったからである。

彼を口説かんと、クライアント側の責任者と共に訪れた。クライアントとは別行動することが多い中で、珍しく行動を共にしたので、印象に残っているのかもしれない。

豊岡という土地は複雑な地形をしているが、基本は盆地であるため夏には暑く、一転して冬は底冷えする。

夏には着て行ったスーツに汗染みが広がり、冬にはもっと厚手のコートを持ってくるべきだったと反省した、生々しい身体の記憶が懐かしい。

そんな豊岡市はコウノトリで有名なうえ、風光明媚な景観も多く持つ。

竹野海岸や出石城下町、城崎温泉など、枚挙にいとまがない。

仕事で通ったためにそうした場所にゆっくりと立ち寄ることはできなかったが、タクシーの車窓から眺めていると、観光客と地元の人々の楽しげな空気が感じられて、なんとなく好きだった。

ザ・観光地!という喧騒とは異なる、和やかな活気である。

明るい気力に満ちていて、仕事後のすこし疲れた身体にも暖かなパワーが染み込んでくる気がした。

……と、そんな話を娘にしたところ、「全然イメージと違うんだけど」と反論されたことがある。

本を読むのが好きな娘からすると、豊岡といえば城崎温泉、志賀直哉の『城の崎にて』が真っ先に思い浮かぶらしい。

それに基づくと、豊岡のイメージは「川・イモリ・生と死」らしい。

あまりにも断片的かつ抽象的すぎて少し笑ってしまったのだが、本から広がる世界というのは、実景とはまた違って面白い。

ふと、彼女が実際に城崎や、豊岡市を訪れることがあったら、どんな感想を抱くか気になった。やはり、志賀直哉を通したイメージの影響を受けながら、あの街を眺めるのだろうか。

思えば、私がこうしてつらつらと書いている半蔵紀行だって、私が感じたこと、見たものを文章化したものだ。志賀直哉と同列に語るのは怒られそうだが、各地のイメージを読者の皆様の中に形作る、という意味では「城の崎にて」と同じわけである。

なんとなく、畏れ多い気がしてきた。

というわけで、半蔵紀行で興味を持った土地には、ぜひとも「百聞は一見にしかず」の精神で足を運んでほしい。きっと、私が見た景色とは異なったものが見えてくるだろう。

こんなふうに実際に訪問することができるようになる日を前向きに楽しみにすることが、生きる活力につながると私は信じている。

2021年5月17日

武元康明

半蔵が食べた兵庫県のうなぎ屋

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