なぜうなぎを紹介するのか?
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綿宗奈良県/大和郡山市1868年以降 創業
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東京風鰻料理 江戸川奈良県/奈良市2004年前後 創業
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活うなぎ専門店 うな源奈良県/大和高田市2009年前後 創業
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大門奈良県/大和郡山市2004年前後 創業
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二鶴奈良県/奈良市1953年 創業
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笠屋町 活活亭奈良県/奈良市2004年前後 創業
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うな菊奈良県/奈良市2017年 創業
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うなぎの みしまや奈良県/天理市1984年前後 創業
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淡水奈良県/天理市1974年 創業
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うなぎの豊川奈良県/奈良市2003年 創業
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かばやきの 味と香りに ついつられ 今日もぶらりと 旭亭奈良県/宇陀市1964年 創業
*創業年は店舗ホームページや店主・従業員に確認した情報を基に、西暦表示しています。
半蔵の心得・半蔵紀行
(うなぎコラム)
出張時に食べ続けているもの
社会人になり約30年。午前は九州、午後は北海道…などと、日夜列島各地を飛び回り、東京で過ごしている日数のほうが少ない。
「出張時はご当地の美味しいものを食べる」という方もいるかもしれないが、私が社会人になってからずっと実践しているのは「うなぎ屋に行く」ことだ。
当然、単純にうなぎが好きという理由もある。しかし、もっとちゃんとした背景もあるのだ。
出張が多くなり、日本各地で食べることができて、かつ店ごとの違いを比較できる食文化は何かないだろうか、と考えるようになった。寿司屋はいたるところにあるが、海に面していない地域もあり必ずしも地元の魚を提供されるわけではない。蕎麦やうどんでは地域ごとの変化を見つけるのは難しい…この問答を続けた結果、うなぎにたどり着いたのである。
関西風は腹側から切って蒸さずに焼き、関東風は背側から切って蒸してから焼く。こうしたうなぎの調理法の違いがあるのは有名だ。とはいえ、全国で食べ比べをする程違いはないのでは?と思う方もいるだろう。しかし実は、各店でタレに使う醤油・ミリンが違い、全国で食べ比べをすると味の違いが如実に出るのだ。
また、私が出張先でうなぎ屋に出会う確率が高いということも理由の一つである。うなぎ屋は元宿場町や元城下町に多いのだが、江戸時代に栄えていた町は現代でも企業が集まりやすい。
行った店の箸袋などを持ち帰ってリストにしているので、見返す楽しみもある。
(全箸袋を公開中)
ところで、うなぎをタレで食べるようになったのは、江戸時代とされている。
うなぎ自体は昔から滋養に効果がある栄養食材として知られていて、『万葉集』では大友家持が夏痩せした友人・石麻呂さに「石麻呂に 我物申す 夏痩せに 良しといふものそ 鰻捕り喫(め)せ」(万葉・一六・三八五三)とうなぎを勧めている。この当時はかば焼きの調理法はなく、単に煮たり焼いたりしていたようだ。
それが江戸時代になるとうなぎ専門店ができてタレが誕生する。酒の肴から丼や重スタイルへと進化していったようだ。タレも、肴として醤油と酒と山椒味噌を煮詰めたものから始まって、ごはんに合うように味醂が加わるようになった。
土用の丑の日にうなぎを食べる風習ができたのも江戸時代。丑の方角を表す北北東を守る「玄武」が黒い神様だったため、「それにあやかって黒いうなぎを食べて元気を取り戻そう」とうなぎ屋の宣伝をしたところ、ヒットしたようだ。実際、うなぎだけではなく、黒ゴマ、黒豆、玄米、黒砂糖など、黒い食べ物には体にいいものが多い。
出張が続くと体調を崩しやすくなる方もいるかもしれないが、私はいたって元気。その秘訣は、各地で味わううなぎにあるのかもしれない。
2019年9月10日
武元康明
奈良県の県民性
「寝倒れ」と言われるも、睡眠時間が短く高学歴な奈良県民
「京の着倒れ」「大阪の食い倒れ」という言葉がある。京都の人は外見にお金をかけ、大阪の人は食にお金をかけるという意味だが、この言葉に対して、奈良を指して使われる言葉が「奈良の寝倒れ」だ。この意味を調べたところ、二つの意味があるようだ。
一つは、鹿が原因で生まれたもの。奈良公園の鹿は神聖なので、死骸があっても自分たちで処理することができず、見つけた人が処分費用を負担して興福寺に処理を依頼しなければならなかった。そのため、誰よりも早く起きて、自分の家の前や敷地内に鹿の死骸がないかチェックして、あった場合はよその家の前に移動させておくという手法をとる人が出てきた。結果、最も朝寝坊する人(長く寝ている人)はお金を払うことになり、費用が嵩んで家を潰す、という話を起源とする説だ。
もう一つは性格を指して生まれたもの。奈良は穏やかで温暖な気候で、盆地に囲まれているために台風などの被害が少ない。農業に適した土地で米をはじめさまざまな農作物が採れるため、食べるものに困らなかった。また職に困ったときには隣接する大阪などの商業地へ出稼ぎにいけばなんとかなった。そもそも大仏や有名な寺院が多いため、観光収入もある。そうした土地柄によって「無欲でのんびり過ごすことを好む」性格が培われていき、結果、「生活にあくせくしない土地柄で寝てばかりいるので、しまいには家を壊す」という言葉が生まれたという説だ。
この性格から、「身の回りのことにしか興味を示さず、消極的で保守的な一面を持つ」とまとめている県民性の本も多い。
ところが、こんな不名誉ないわれ方をしているにもかかわらず、奈良県は教育熱心で全国的に見ても偏差値が高いというデータがある。
統計ジャーナリストの久保哲朗氏のサイト「都道府県別統計とランキングで見る県民性」によると、2020年の京都大学、旧七帝大、東工大、一橋大、大阪大学、同志社大学の合格者数は全国1位。東大合格者数は全国2位、学習塾や予備校の費用は全国1位(2016年)だ。
一世帯あたりの純資産は全国2位(2016年)であり、睡眠時間は全国43位(2020年)と短い。
奈良県は1965年頃から大阪のベッドタウンとして宅地開発をされたことで、人口が一気に増加した。これにより、もともとあった「奈良の寝倒れ」文化が薄れたことがデータに現れているのかもしれない。いずれにしても、自己主張しすぎず、どこかゆったり構えて周囲とももめにくい人柄が集まっている奈良県は、優秀な人材の宝庫と言えるのではないだろうか。
2020年12月22日
武元康明